京都の異界を歩く

ちょっと変わった京都の探訪記です

清水音羽川を歩く(その1)〜京都の廃河川〜

かつて清水寺から鴨川へ、「音羽川」という川が流れていました。

水源は清水寺の「音羽の滝」。そこから大谷墓地の脇を通り、"清水焼の郷"の真ん中を抜けて、正面橋付近から鴨川へ。

ただこの川も、途中から下水道と一体化したり、水系が入れ替わったりと、複雑な運命をたどります。

清水焼と切っても切れない関係をもつ音羽川。その流域を探索する旅に出ましょう。


清水寺からスタート!


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という訳で清水寺にやって来ました。まずは本堂にお参りしましょう。



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清水の舞台。いつも観光客でごった返している所です。ここからの景色は最高ですよね。



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奥へ歩いて子安塔に到着。ここまではあまり観光客も来ません。光明皇后の安産祈願が成就したので建立された建物です。鎌倉時代の創建で、室町時代の再建。国指定重要文化財

では音羽川の水源である「音羽の滝」へ行きましょう。


水源は音羽の滝


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音羽の滝に到着しました。「え?どこ?」って言わないで!(笑)

上の3本のコンクリートの滝口から、水がチョロチョロ落ちてるのが見えますよね。それが「音羽の滝」です。

もっと詳細にいうと、その上に見える朱色のお堂の中が "水の湧いている所"。そこから3本の滝となって、下の池に降り注いでいる、という訳です。



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上の3本のコンクリートの滝口から、下の池に降り注いでいる水が見えますよね。
その後、池の左下にある排水口から吐き出され、暗渠となって左の通路へ進みます。



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通路部分をアップ。かなり見づらいけれど、右端と左端のグレーチングが分かりますか?(黒っぽい鉄格子の蓋。左の蓋は足で踏まれてる)

その間を暗渠となって、右から左へ流れている訳です。この通路の左側には「滝乃堂」という建物がありますが、その裏側を覗いてみましょう。



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滝之堂の裏側を覗くと、暗渠から流れ出た水が、一つの小さな滝となって、さらに下方へ落ちているのが見えます。



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その下を見ると、流れ落ちた水はどんどん斜面を流下して、谷底の川へと続いているようです。遊歩道があるので、谷底へ降りてみましょう。

(ただし2022年3月現在、工事中のため入れないようです)


遊歩道から墓地入り口へ


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これは谷底から上流を望んだ所。左上に清水の舞台、中央下に小川が見えます。



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続いて下流方向を望む。音羽川は渓流となって下っていきます。その右側に遊歩道。この道は清水寺入り口付近で、通常の順路に合流します。



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清水寺の入口付近には、忠僕茶屋や六花亭などのお茶屋があります。そこから南西方向に進んでいくと・・・



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大谷墓地入り口が見えてきました。清水寺から墓地に直接抜ける出入口がある事は、あまり知られてないと思います。ここは迷わず入っていきましょう。


大谷墓地の脇を歩く


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広大な大谷墓地!かつての鳥辺野の葬送地です。火葬が一般化するまで、死体はここに捨てられていました(それを葬送地と言います)。

それにしても、観光地の清水寺のすぐ隣に、こんな広大な墓地が広がっているなんて、ほとんどの人は知らないのではないでしょうか。

それでは左側(南側)の谷底へ降りていきましょう。



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谷底までやって来ました(上流方向を望む)。ここも何か工事中のようですが、音羽川はちゃんと流れています。



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今度は下流方向を望む。川の上流らしく、砂礫が多いですね。右の斜面の上は墓地。



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そのまま大谷墓地の最下部を歩いて行きます。これは途中から上流方向を見たところ。



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途中には砂防ダムもありました。という事は土石流が頻繁に発生していたのでしょう。それなら平野部に出た所に扇状地があるはずです。はたしてどうでしょうか。



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どんどん大谷墓地の脇を歩いていきます。右側を見上げれば、見渡す限り墓地。ちらほら墓参者を見かけます。

それにしても、自分の行動は怪し過ぎですよね。はたして、どんなふうに見られてるのやら(笑)。



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さらに歩いていくと、少し向こう側が開けてきたような気がします。もうそろそろ墓地の終わりでしょうか。


五条バイパスの下へ


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ついに五条バイパスの高架橋が現れました。まだ右下に墓地が見えているので、そこまで行ってみましょう。



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墓地の最下段まで来ました。写真は上流側を見たところ。右上に橋脚、下に音羽川が見えています。



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下流側を見てみると、別の川との合流部分も見えますね。(車の左側)



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高架橋の下は、こんな感じの駐車場になっているようです。この景色を目に焼き付けておきましょう。後で再びやって来る予定ですから。


大谷本廟へ寄り道


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大谷墓地の最下段の風景。今まで散々"お付き合い"してきましたが、ここで墓地ともお別れです。階段を上がって、大谷本廟へ向かいましょう。



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大谷本廟親鸞聖人の御廟です。広大な敷地に静かな仏殿。心が落ち着きます。トイレもあるので少し休憩しましょう。



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大谷本廟を後にします(写真は振り返って総門を見た所)。これで静かな空間ともお別れですね。


五条交差点から五条バイパスの下へ


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ついに五条交差点へ到着。ここはいつもタクシーが並んでますね。では左に見える五条バイパスをくぐって、南側へ向かいましょう。



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五条バイパスの下を通って、先ほど"目に焼けつけた所"に戻ります。



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先ほど上から見た"川の合流部"に到着。ここからまた川を下って行きましょう。



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下流方向を望む。ここから音羽川はカーブしながら進んでいきます。


古い街並みの中へ


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橋が掛かっています。この辺りから高架橋を離れて、古い街並みの中へ入っていくようですね。



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橋から上流側を見ておきましょう。橋脚が見えますね。



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今度は橋から下流側を。完全に街並みの中です。地盤が砂礫のため、透水性が高いせいか、流量は少ないようですね。



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山ぎわをどんどん進んでいきます。ところで、かつては日本全国どんな街の中にも、こんな感じの"どぶ川"がありましたよね。

そう、今"どぶ川"と言いましたが、下水道が整備される前の古い時代は、本当に"どぶ川"でした。各家庭からの排水が流れ、常に汚臭が漂ってました。



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またまた橋が掛かっています。

ちなみに今は、ほとんどの街で下水道整備が進んでいるので、家庭からの排水も流れる事なく、川は格段に綺麗になったと思います。

ではそのまま進んでいきましょう。



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ここで左から来た別の川と合流して、緩やかに右へ折れていくようです。



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左から来た別の川も、ちらっと見ておきましょう。ちなみに、この川の水源は「フォーシーズンズホテル京都」の庭池。

昔は妙法院でしたが、敷地を分けたため、フォーシーズンズになりました。大正時代の地図に明瞭に描かれています。

では庭池の水源は?僕の推定では、音羽扇状地の湧水だろうと思っています。地形的にあり得る話じゃないですか?



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また音羽川へ。別の川と合流後、緩やかに右へ折れていきます。


再び五条バイパスの下へ


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ここで駐車場に出ました。(これは振り返ってみたところ)



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駐車場に出た所の橋から、上流側を見ておきましょう。



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今度は橋から下流側を。右側に五条バイパスも見えますね。



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駐車場にあったお地蔵さん。京都は本当にお地蔵さんが多い。そして地蔵盆という祭りも、京都の"夏の終わり"を告げる風物詩です。


ついに下水道になる


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お地蔵さんの左側で、音羽川は、まさに暗渠となって潜っていきます。

今、暗渠と言いましたが、実は下水道!京都市は昭和40年頃まで、雨水や山水も下水道に流入させていました。それどころか、小川をそのまま下水道化したところもあります。

それがここ!小川を下水道化した証拠を目の当たりにしているのです。ここから音羽川は下水道として流れていきます。(ちなみに今でも下水道の約40%はそのままらしい!)



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そのまま進むと、すぐにこんな感じ。このコンクリートの所が下水道に相当しますね。

という訳で、ここからはスミトンに大活躍してもらいます。スミトンというのは京都市下水道マップ。ネットに公開されていて、廃河川探索には無くてはならないツールです。


五条交差点に到着


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そのまま下水道を追いかけていくと、また五条交差点に向かいます。

アスファルト舗装のために、分かりづらくなってしまいましたが、位置的に、このコンクリートの四角形のものが、下水道の設備(蓋?)で間違いないしょう。



~ 清水音羽川を歩く(その2)へ続く ~